先日、岸田劉生展に行ってきた。
新聞で「写実から写意へ」というサブタイトルを見て、これはどういう意味だろう・・・と思ったのがきっかけだった。
行ってみると、写意とは、対象の内なる美を表現する姿勢、描き方をいうのだと説明してあった。あったと思う。別の言い方では東洋の美とも書いてあった。
これまでの私の印象としては、画家の人たちは、最初は写実的な絵を描いていても、だんだんとそこにとどまらず、別の表現を探す旅を始める人が多い気がする。(中には写実を極めようとする人たちもいるが。)そして、その人独自の表現にたどり着く人がいる。ただ岸田劉生がどうなのかは今の自分にはわからない。
展示室には、写実的な絵、写意を試みた絵など、さまざまな絵、もしくは雑誌の表紙を飾る版画のような作品もあったが、私にとっては写意を試みた絵というのは、あまり魅力を感じることができなかった。淡い色合いで、イラストのようなタッチの作品が多く、いいと思うものもあったが、劉生さんは、この絵をほんとうに描きたかったのか、疑問だった。内なる美を表現しようとする試行錯誤の過程としての絵としてならわかるのだが。
ただ、晩年に静物画も描いている。そこにはりんごとぶどうなど、具体的で写実的な絵があり、また、写実ではないけれども、魅力を感じる静物画の作品があった。若くして亡くなっているので、その後も生き続けていれば、どういう画風になっていったのかと思う。
最初の展示室に、2つの舟が並んで描かれている絵があった。
いろんな絵が展示してあったが、僕の場合はこの絵が最も好きな絵だった。なぜかこの展示室の匂いも好きだった。